民法・関連法令法令基準日 2019年4月1日
令和元年度(2019年)管理業務主任者試験 問3
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1債権が不法行為によって生じたときは、被害者は、加害者の反対債権が金銭債権の場合であっても、相殺をもってその加害者に対抗することができない。
- 2土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり、それによって他人に損害を生じた場合において、当該工作物の占有者及び所有者は、その損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その損害を賠償する責任を負わない。
- 3被害者に対する加害行為とその加害行為の前から存在した当該被害者の疾患がともに原因となり損害が発生した場合において、加害者にその損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、その加害行為の前から存在した当該被害者の疾患を考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
- 4不法行為により被害者が死亡した場合において、当該被害者の父母は、非財産的損害については、加害者に対して、賠償請求をすることができない。
正解 肢3
出典:令和元年度 管理業務主任者試験 問3。本サイトは非公式の学習サイトです。
解説AI解説
本問の論点
不法行為に関する条文知識と判例法理を問う問題である。相殺禁止の方向、工作物責任における占有者と所有者の責任の構造、被害者の素因による減額、近親者固有の慰謝料請求が論点となる。
正解の根拠
民法第722条第2項は、被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができると規定する。判例は、加害行為と被害者が有していた疾患がともに原因となって損害が発生し、加害者に全部を賠償させるのが公平を失するときは、同項の趣旨を類推して疾患を考慮できるとしている。肢3はこの法理のとおりであり正しい。よって、正解は肢3。
各肢の検討
肢1: 誤り。民法第509条第1項が禁じるのは、不法行為によって生じた債務を受働債権とする相殺であり、被害者の側から自らの不法行為債権を自働債権として相殺することは妨げられない。
肢2: 誤り。民法第717条第1項ただし書は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならないと定めており、所有者は免責されない。
肢3: 正しい。被害者の疾患という素因を考慮した減額が認められる。
肢4: 誤り。被害者が死亡した場合、その父母は固有の慰謝料として非財産的損害の賠償を請求することができる。
一言まとめ
相殺禁止は被害者を守るための片面的な規律であり、工作物責任の最終負担は常に所有者に落ちる。
一問一答各肢の正誤
×肢1債権が不法行為によって生じたときは、被害者は、加害者の反対債権が金銭債権の場合であっても、相殺をもってその加害者に対抗することができない。
誤り。民法第509条第1項が禁じるのは、不法行為によって生じた債務を受働債権とする相殺であり、被害者の側から自らの不法行為債権を自働債権として相殺することは妨げられない。
×肢2土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり、それによって他人に損害を生じた場合において、当該工作物の占有者及び所有者は、その損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その損害を賠償する責任を負わない。
誤り。民法第717条第1項ただし書は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならないと定めており、所有者は免責されない。
○肢3被害者に対する加害行為とその加害行為の前から存在した当該被害者の疾患がともに原因となり損害が発生した場合において、加害者にその損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、その加害行為の前から存在した当該被害者の疾患を考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
正しい。被害者の疾患という素因を考慮した減額が認められる。
×肢4不法行為により被害者が死亡した場合において、当該被害者の父母は、非財産的損害については、加害者に対して、賠償請求をすることができない。
誤り。被害者が死亡した場合、その父母は固有の慰謝料として非財産的損害の賠償を請求することができる。
関連条文解説で引用
- 民法第722条第2項
- 民法第509条第1項
- 民法第717条第1項
法令基準日:2019年4月1日現在で施行されている規定に基づく。本サイトの解説は学習補助を目的とし、法的助言ではありません。